ベルギー王立美術館展 上野国立美術館

ある晴れた秋の土曜日の午前中。上野国立美術館。ベルギー王立美術館展にいく。

2006年9月12日(火)〜12月10日(日)国立西洋美術館(東京・上野公園)
http://event.yomiuri.co.jp/royal/works01.htm

なんと言ってもこの絵のことが忘れられないので張っておく。

イカロスの墜落」ピーテル・ブリューゲル〔父〕(?)16世紀後半
Landscape with the Fall of Icarus

人が死しても、鋤は休まぬ

http://www.salvastyle.com/menu_renaissance/brueghel_icarus.html

それにしても、なんというイカロスの扱い。牛は黙々と畑をたがやし、羊飼いはそっぽ向いている。なんというパースペクティブ
ヒロイックな行動に驕らずに地道に生産的に日常を生きていきていかなければ。ついつい浮かれがちな我が日常を振り返らずにはいられないのである。

おれが得意になってしていることは、この医師なんか、真に幼いこととしてしか関心を抱いてはくれないのだな。痛快だ。こういった他人がいることを、ここになって知るとはな。
残像に口紅を 筒井康隆

イカロス」に込められた真の寓意とは

さらにこの絵についての記述をみつけた。
ほぼ同一構図の絵が2枚存在し、もう一枚には空を飛ぶ父ダイダロスが描かれている(寓意はかなりかわるじゃないか)。
さらに左端中央の森の中に横たわる老人の死体(後の研究では排泄する通行人の臀部を書き換えた!)が描かれていることを知る。

「ちゃんと題名がついてるじゃないか」という声もあるかもしれないが、古い絵画のタイトルは後世の研究者が便宜上つけたものが多いわけで、必ずしも最適な題名とは限らない。実際、この絵をみて「イカロス」という主題をよく発見したと感心せざるをえない。ヴァン=ビューレン博物館本なら、まだわかりやすいが、ブリュッセル王立美術館本では、海に足がみえるだけなのだ。たぶん、ハンス=ボルの同主題の絵画(ストックホルム)や、ブリューゲル制作の同主題の版画から推察したのだろう。
Bianconiは、前述の死体のイメージから、「働くものは、人の死に気がつかない」といった諺を主題と提案している。これは、トルネイCharles de Tolnayのいう「人は死すとも鋤は止まらず」のほうが良いような感じが、する。トルネイによると、鋤の前景にある岩・土手上にある剣と財布にも諺の意味があるようで「剣と金は、使いよう」だそうだ。

http://members.at.infoseek.co.jp/yamashina/icarus/icarus.html

多分16世紀の人の気持ちなんかわからない。
(2008/3/20)

ブリューゲルへの旅 (文春文庫)

ブリューゲルへの旅 (文春文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)